WBS とは?
WBS (Work Breakdown Structure) は、プロジェクトの成果物を明確に定義し、管理するために広く使用されているプロジェクト管理手法です。WBS は、複雑なアクティビティをより小さな成果物 (作業パッケージ、タスク、サブタスクなどと呼ばと呼ばれることが多い) に分解する階層構造であり、作業の評価、割り当て、追跡を容易にすると同時に、各部分が互いにどのように関連しているかを示します。
多くのプロジェクト管理手法が具体的なアクションに焦点を当てるのに対し、WBS は最終的な成果物に注目するのが大きな特徴です。適切に構築された WBS を活用することで、プロジェクト内の複雑なタスクをより効果的に管理・監督できるようになります。さらに、測定可能なタスクを明確に定義できるため、コスト見積もりやスケジュール管理の精度が向上し、プロジェクト全体の計画立案とモニタリングを大幅に簡素化できます。
効果的な WBS の要素
優れた WBS を構築することで、プロジェクト内におけるタスクの割り当てや進捗の追跡がスムーズになります。その効果を最大限に発揮させるために、WBS は以下の要素を備えている必要があります。
- 明確な定義:プロジェクトの関係者全員が内容を正しく共通認識できるよう、各要素が具体的に定義されていること。
見積もりのしやすさ:必要なコストや期間を正確に算出できるよう、タスクごとの期間、費用、リソースが網羅されていること。 - 管理のしやすさ:責任の所在を明確にするため、各ワークパッケージに担当のチームや個人が割り当てられ、適切な報告期間内で完了できる規模に抑えられていること。
進捗の測定可能性:進捗状況を正確に把握・測定するため、開始日と完了日、および具体的なマイルストーンが設定されていること。 - 柔軟性 :スケジュールの変更や軽微なタスクの追加に柔軟に対応できる構造であること。ただし、スコープの肥大化を防ぎ、当初予定していた成果物の全体像を維持するという WBS 本来の目的も常に念頭に置く必要があります。
プロジェクト管理において効果的に機能する WBS を作成する際は、以下のポイントに留意しましょう。
- きめ細かく。プロジェクトの成果物をできるだけ掘り下げて分解し、動詞の形でタスクを表します。実用的なベンチマークとして、多くのチームが「8/80 ルール」を適用し、各作業パッケージのサイズを約8〜80 時間 (組織によっては、約 10 日または標準の報告期間以内) に抑えています。
- 正確かどうかをよく確認。すべての成果物、期限やリソースが適切に記録されていることを確認します。
- 補足的なアクティビティも盛り込む。トレーニングやテスト、製品やサービスの立ち上げ、実装などのアクティビティも考慮します。文書化やレビューなどの非 IT /手続関連の作業アクティビティも含めるようにしましょう。
- 作業パッケージをチェック。作業パッケージは他の作業パッケージから完全に独立した形で作成します。図内でタスクが重複しないよう気をつけましょう。この推奨事項は、広く使用されている 2 つのガイドライン、「100%ルール」(WBS がプロジェクトの範囲を100%捉え、余分なものを含まない) と「相互排他性」(成果物やサブタスクが二重に現れず、作業、コスト、または時間の二重計上を防ぐ) に沿っています。
- 成果に常に注目。構造を、アクションリストではなく、成果物と測定可能なマイルストーンを中心に据えます (例:「ブレーキパッドの調整」ではなく「ブレーキシステム」)。
- 適切な深さを目指す。多くの WBS 図では、全体として詳細は 3 つのレベルに分かれますが、作業を真に管理可能にするために、一部の分岐で他の分岐よりもさらに細分化が必要になる場合があります。
WBS の種類
プロジェクト管理で一般に使用される WBS には、プロセス指向の WBS と成果物指向の WBS の2種類があります。このどちらもプロジェクトのスコープ定義に使うことができ、一緒に使用することでプロジェクトの管理プロセスを独自の視点から俯瞰して、貴重な洞察を得ることができます。
プロセス指向の WBS
プロセス指向の WBS は、ステップ、作業のフェーズや機能の観点からプロジェクトを定義します。このタイプの WBS は、プロジェクト完了のために個別の部門で行うべきステップに重点を置いたもので、通常、個々の要素を動詞形式で表します。
プロセス指向の WBS を成果物指向の WBS と組み合わせることで、機能の観点から作業を完全に分解でき、より一貫したプロジェクトのスコープを作成できるようになります。また、プロジェクト全体で質の高いプロセスが実装されていることを確認するためにも使用できます。

成果物指向の WBS
成果物指向の WBS は、具体的な成果物のコンポーネントの観点からプロジェクトを定義します。成果物は通常、プロジェクト全体の完了に必要な物理的コンポーネントやアイテムを指します。
成果物指向の WBS は、プロジェクトマネージャーがプロジェクトの全体的なスコープを確認し、成果物がそれぞれどう関連しているかを確認するのに特に役立ちます。また、さまざまな管理レベルで作業の概要をつかみやすくなり、費用とリソース見積もりの精度を高めるためにも有用です。

WBSとガントチャートの違いと関係性とは?
WBS は、ガントチャートと違いあくまでも作業の内容を分解した表のことを示します。ガントチャートとは違い、スケジュール管理や工程管理を確認しやすくない図ですが、ガントチャートを作成する前に WBS を必ず作成することをおすすめしています。
WBS を作成することによって、事前にプロジェクトに関わる全ての作業内容の理解と洗い出しが実現します。WBS の作成完了後、内容をガントチャートに映し出し、工程管理や進行状況を視覚的に行なっていくことができます。

WBS は誰のためのもの?
WBS は、プロジェクトを適切に整理し、成功へと導くために様々な場面で活用できます。プロジェクトマネージャーだけでなく、以下のような役割を担うメンバーにとっても非常に有益です。
- アカウントディレクター: プロジェクトの障害を含め、クライアントにプロジェクトの進捗状況を示すためにWBS を使えます。アカウントチームとクライアントの間でプロジェクトの成果物に対する共通認識を確立するためにも便利です。
- イベントプランナー:イベントに関連する未確定事項をすべて盛り込むことで、イベントの企画に関するタスクやサブタスクを効果的に追跡するのに役立ちます。イベントの制作は通常、期限までの日数が限られた状況で行われるため、作業の分解が特に有効です。
- ソフトウェア開発者 : ソフトウェア開発はステージやフェーズに分かれている場合が多いため、WBS の用途として適しています。チーム全体が重要な成果物の完成を確実に追えるようになり、ワークフローの効率化に役立ちます。
- 商業プロジェクトマネージャー : 商業プロジェクトの進行は、具体的なプロジェクトのコンポーネントの実現に特に左右されます。プロジェクトに複数の請負業者が関与する場合、予定どおりに成果物が完了するよう、チーム間でタスクの依存関係を強調するのに役立ちます。
より広義には、新製品の発売や大規模なソフトウェア展開など、複雑な施策を主導するチームは、WBS で圧倒されるような目標を成果物と責任の体系的なロードマップに変えることができます。
WBS の作り方ステップ
- 成果物をリストアップする:プロジェクト完了に必要となる主な成果物をすべてリストアップします。リストに盛り込む前に成果物に関する不明点をすべて洗い出し、さまざまな関係者に確認してもらって正確なリストを作ります。WBS が合意された目標に固定されるように、この段階で、包括的な目的とスコープをプロジェクト憲章に文書化するのも有効です。
- 各成果物を個別のコンポーネントに分解する:プロジェクトを主要なフェーズまたは主要な成果物に分割し、すべてのアクションを列挙するのではなく、具体的な成果に焦点を当てます。
- プロジェクトをタスクタイプまたは役割で分ける:コンポーネントの数に上限はないので、できるだけ徹底的に行ってください。
- 各コンポーネントを作業パッケージに分解する:コンポーネントを個人が完了できる単一のタスクに至るまで分解します。作業プロジェクトには予算、リソース、マイルストーンや期限も必ず含めます。作業パッケージは通常、分解構造の中で最下位レベルであり、各タスクの作業内容、期間、コスト、タスクの所有者を定義する必要があります。各作業パッケージには、報告期間内に完了できる課題が含まれる必要があります。
- 依存関係を特定する:どのタスクに依存関係があるかをしっかり把握します。ここで明確にすることが、潜在的なリスクを割り出し、効率的な時間管理を行うのに役立ちます。依存関係をマッピングしていくにつれて、現実的なスケジュールを策定し、リスク領域を早期に特定することも容易になります。
- 依存関係の優先順位を付けて作業パッケージを割り当てる:依存関係を明確に特定したら、優先順位に従って作業パッケージを図式化します。作業パッケージをそれぞれ適切な個人に割り当て、主要な成果物の完成に至るまで作業を進めます。タスクを最終決定する際、WBS が依然として全範囲を反映している (100%ルール) こと、およびパッケージ間に重複がないこと (相互排他性) を再確認してください。
- 適切に構築された WBS は、作業範囲記述書の作成、コストの見積もり、タイムラインの策定、役割の明確化、進捗状況の追跡、リスクの特定などの下流の計画成果物をサポートします。これは、プロジェクト全体よりも評価しやすい、個別で目に見える単位にプロジェクトが分割されるためです。
WBS の例
WBS テンプレート
この基本テンプレートでは、各製造成果物が具体的なステップに明確に分割されており、最終プロジェクトを完了するために何をすべきかが明確になっています。

機能分解図テンプレート
タスクを主な作業のカテゴリーに分割し、さらに小さな作業パッケージに分解してプロジェクト全体をトップダウン形式で表したテンプレートです。
リスク分解図テンプレート
プロジェクトのさまざまな領域に関する潜在的なリスクを特定、分類、分解するテンプレートです。
別の一般的な例として、住宅建設の WBS を考えてみましょう。プロジェクトは、基礎、外装、内装などの主要なセクションに分割され、さらに追加のレベルに細分化されます (多くの場合、合計で約 3 レベルまで)。作業パッケージの全体は、合計すると必要な作業量の 100%となり、重複作業がない状態であるべきです。各パッケージに予算を追加し、責任を持つチームを割り当てることでさらに充実させることができます。
WBS の主な形式
WBS を作成する際は、タスクをどのように分解するかだけでなく、それをどのように可視化するかを選ぶことも重要です。WBS は、階層型のテーブルやアウトライン、番号付きリスト、表形式のビュー、あるいはツリー図など、さまざまな形式で表現することができます。
ツリー図
最も視覚的なオプションはツリー形式です。WBS が組織図のように構築されてタスクの階層を示し、作業パッケージに関する追加情報のためのスペースもあります。
アウトライン構造
テキストによるアウトラインは WBS の中でも最も単純な形式で、作成しやすく、タスクの階層を示すものです。ただ、予算、期間や割り当てなどの情報を追加するのが難しい欠点があります。
家を建てる
1 基礎
1.1 掘削
1.1.1 掘り返し
1.1.2 均し
1.2 枠
1.3 コンクリート
1.3.1 注入
1.3.2 硬化
2 外装
3 内装
階層構造
この形式はそれほど直感的には見えませんが、タスクの階層を示すものです。表形式のため、ページへの収まりも良好です。
表形式ビュー
表形式ビューは、階層を表でより分かりやすく示したものです。
WBS 辞書
WBS の階層構造に対応する形で、各ワークパッケージの具体的な説明を記載したものです。プロジェクトのドキュメントを作成する際、WBSの図にこのWBS辞書を添えることがよくあります。これにより、各タスクのスコープが明確になり、チームメンバー全員がそれぞれの担当範囲を正確に理解できるようになります。
WBS の作成を始める準備ができたら、ぜひ Lucidchart をお試しください。まずは無料アカウントから登録し、直感的な作図機能を活用して、プロジェクトの成果物をこれまで以上に迅速かつ効率的に細分化してみましょう。

オンラインでホワイトボードを使うために必要な機能を完備
チーム向けの究極のオンラインホワイトボードを手に入れましょう。Lucidspark の無限キャンバスで、ブレインストーミングやプロジェクトの計画、バーチャルなコラボレーションができます。
無料ではじめる



