このガイドでは、フローチャートの定義や歴史、正しい書き方、使用する記号の意味から、Lucidchart のテンプレートを活用する方法まで、必要な知識を具体的な作成例とともに分かりやすく解説します。
フローチャート (フロー図) とは?
フローチャートとは、業務のプロセス、システム、またはコンピューターのアルゴリズムを視覚的に表現した図(流れ図)です。複雑化しやすいプロセスの記録、学習、計画、改善、伝達を明確かつ分かりやすい方法で実現するためのツールとしてさまざまな分野で広く活用されています。基本的には、長方形や楕円、ひし形などの専用記号で個々の手順を定義し、それらを矢印でつなぐことで処理の順序や全体の流れを表現します。手書きのシンプルなメモから、専用ツールで描かれた包括的なシステム図まで、その様式は多岐にわたります。エンジニアなどの技術職だけでなく、一般的なビジネスパーソンまで職種を問わず幅広い分野で活用されています。フローチャートは時に、プロセスフローチャート、プロセスマップ、機能フローチャート、ビジネスプロセスマッピング、ビジネスプロセスモデリング表記法 (BPMN) やプロセスフロー図 (PFD) など、より専門的な名称で呼ばれることもあります。データフロー図 (DFD) や統一モデリング言語 (UML) アクティビティ図といった他の人気の高い図とも関連のあるものです。
フローチャートの記号と意味
ここでは、代表的なフローチャートの記号とその意味をいくつかご紹介します。より詳細な内容については、フローチャート記号ページにて一覧をご覧ください。
| 端子 | |
| プロセス | |
| 判断 | |
| 文書 | |
| データまたは入力/出力 | |
| 記憶データ | |
| フロー矢印 | |
| コメントまたは注釈 | |
| 定義済みプロセス | |
| ページ内結合子/参照 | |
| ページ外結合子/参照 |
フローチャートの書き方
- 目的と範囲を定義します。どのようなプロセスを可視化したいのか、その目的を達成するために適切な「開始点」と「終了点」が設定されているかを確認しましょう。事前の調査段階では詳細に検討し、実際の作図段階では読み手に意図が確実に伝わるよう、シンプルにまとめることが大切です。
- タスクを時系列順に洗い出します。関係者へのヒアリングや実際のプロセスの観察、既存の手順書の確認などを通じて、必要なステップを特定しましょう。この段階では、メモ書きやラフスケッチの形で手順を書き出してみるのもおすすめです。
- 各タスクを「処理」「条件判断」「データ」「入出力」などのタイプに分類し、対応する正しい図形を使って整理します。
- 手書きのスケッチをベースにするか、あるいは Lucidchart などのオンラインツールを使用して実際の図を作成します。
- プロセスの関係者と一緒に手順を最初からたどり、作成したフローチャートを確認します。実際の流れと照らし合わせ、目的達成に必要な重要要素や分岐が抜け落ちていないかを検証しましょう。
Lucidchart でのフローチャート作成は、非常に直感的でシンプルです。必要な図形をキャンバスにドラッグ&ドロップし、それらを線で結ぶだけで完成します。もし何から手をつければよいか迷った場合は、まずは「フローチャートの作成方法」ガイドで基本を押さえるのがおすすめです。
Lucidchart フローチャート書き方ビデオガイド

業務のプロセスフローを理解やプロセスの可視化を行う際や、プログラミング教育にも欠かせないフローチャートの作成ステップやコツ・ポイントをこの動画ではご紹介しています。
フローチャートのヒント
- 図の受け手を常に意識し、そのニーズに合わせた適切な情報量で図を作成しましょう。フローチャートの最も重要な目的は、情報を明確かつ正確に伝えることです。
- 作図対象のプロセスに複数のチームや部門が関わる場合には、それぞれの役割分担や責任範囲がひと目で分かるよう、スイムレーン図の使用を検討してみましょう。
- ページ内・ページ外結合子を活用して図をスマートに整理することで、フローを論理的に描き出すことができます。これにより、図が複数のページに及ぶ場合でも、プロセスの流れを分断せずに分かりやすく表現できます。
フローチャートの歴史
フローチャートが業務プロセスの記録に使われるようになったのは、1920年代~1930年代のことです。1921年に、生産管理技術者のフランク・ギルブレスとリリアン・ギルブレスの夫妻が、「フロープロセスチャート」をアメリカ機械学会 (ASME) で紹介しています。 1930年代初頭には、工業技術者のアーラン・H・モジェンセンが、自社の業務効率向上をテーマとした会議でのプレゼンテーションでギルブレスのツールを使用しています。 1940年代には、モジェンセンの薫陶を受けたアート・スピナンガーとベン・S・グラハムの両氏がこのメソッドをより広範に普及させています。スピナンガーは、Procter and Gamble に業務の簡略化手法を導入しています。Standard Register Industrial の取締役であったグラハムは、フロープロセス図を情報処理に採用しました。1947年に、ASME は、ギルブレス夫妻の業績から派生したフロープロセスチャートのための記号システムを採用しています。
また、1940年代後半には、ハーマン・ゴールドスタインとジョン・フォン・ノイマンがコンピュータープログラムの開発にフローチャートを用いました。その後まもなく、フローチャートはあらゆるプログラムやアルゴリズムの設計における定番ツールとして広く普及します。フローチャートは現在でもプログラミングに用いられていますが、より詳細なレベルを表し、最終製品に近づくことができるよう、また、人間が読解できるように単語とコード言語を組み合わせた擬似コードが用いられるのが一般的です。
日本においては、製造業における品質管理(QC)の取り組みで世界的に知られる石川馨(1915年〜1989年)が、品質管理の重要な手法の一つとして、ヒストグラムやチェックシート、現在では「フィッシュボーン図」とも呼ばれる特性要因図などと共に、プロセスを視覚化する補完的なツールとしてフローチャートを挙げています。
コンピュータープログラミング・アルゴリズムのためのフローチャート
視覚的なデータフローの表現であるフローチャートは、プログラムやアルゴリズムを作成し、他のメンバーに説明したり、共同作業を行う上で役立ちます。アルゴリズムフローチャートを使用すれば、自動化された処理のコーディングを開始する以前に、プログラムの背景となるロジックを表現することができるようになります。大局的な思考を整理する上で有用であり、コーディングの段階ではガイドとして道案内役を果たします。具体的には、フローチャートで以下のような内容を実現することができます。
- コードの成り立ちや仕組みを示す。
- プログラム内でのコード実行を可視化する。
- ウェブサイトやアプリケーションの構造を示す。
- ウェブサイトやプログラムでユーザーが取る行動の道筋を理解する。
プログラマーは、しばしば、人間が読解できるよう自然言語とコンピューター言語を組み合わせた擬似コードを書くことがあります。フローチャートよりも詳細な記述を行い、フローチャートの代わりとして、あるいは実際のコードへの次のステップとして役立つものです。
コンピューターソフトウェアで用いられる関連図には、以下のようなものがあります。
- 統一モデリング言語 (UML): モデリングのためのソフトウェアエンジニアリングで使用される汎用言語です。
- NS チャート (Nassi-Shneiderman 図): 構造化プログラミングに使用されます。1972年にニューヨーク州立大学ストーニーブルック校でこの図を開発したアイザック・ナッシとベン・シュナイダーマンの名を冠したものです。ストラクトグラムとも呼ばれます。
- DRAKON 図: DRAKON はアルゴリズムビジュアルプログラミング言語で、フローチャートを生成するために使用されます。
さまざまな分野でのフローチャートの利用
フローチャートは、コンピュータープログラミングの他にも、さまざまざ分野で活用されています。
一般的な利用:
- プロセスのドキュメント化と分析
- 効率と品質向上のためのプロセスの標準化
- 研修や他部署における理解促進のためのプロセスの伝達
- プロセスに含まれるボトルネック、冗長性、不要な手順の特定と改善
教育:
- 学習課題や就学上の要件の計画
- 授業計画や口頭でのプレゼンテーションの作成
- グループまたは個別のプロジェクトの整理
- 有権者登録などの法的または行政上のプロセスの表示
- 歌詞や詩など、創造的な著作の計画や構成
- 文学や映画における登場人物の展開のデモンストレーション
- アルゴリズムや論理的パズルの流れの表示
- クレブス回路などの科学的なプロセスの理解
- 消化などの解剖学的プロセスの図示
- 疾患や障害の症状や治療の図式化
- マズローの欲求段階説などの仮説や理論の伝達
セールス・マーケティング:
- アンケートフローの策定
- セールスプロセスの図式化
- 研究戦略の計画
- 登録フローの表示
- 緊急時広報プランのようなコミュニケーションポリシーの発信
ビジネス:
- 発注と調達プロセスの理解
- 従業員のタスクや日々の定形業務の表示
- ウェブサイトや店舗内でユーザーが取る行動の道筋の理解
- ビジネスプランや製品実現計画の作成
- 法規制遵守を始めとする、監査準備プロセスのドキュメント化
- 販売・統合準備プロセスのドキュメント化
製造:
- 製品の物理的または化学的構成の表示
- 製造プロセスの開始から終了までの図示
- 製造や調達プロセスにおける非効率性の発見と解消
エンジニアリング:
- プロセスフローやシステムフローの図示
- 化学やプラントのプロセスの設計と更新
- 構造物のライフサイクル評価
- リバースエンジニアリングの流れのグラフ化
- 新しい構造物、製品の設計、試作段階の表示
フローチャートの主な種類とその特徴
フローチャートの定義は、著者により千差万別であり、これまでさまざまな形で論じられてきました。アラン・B・スターネッカート、アンドリュー・ベロニス、マリリン・ボール、マーク・A・フライマンなどの専門家が自身の著作でフローチャートについて記しています。スターネッカートは、2003年の自著「クリティカル・インシデント管理 (Critical Incident Management)」で、一般に用いられるフローチャートとして4種類を挙げています。フローそのものよりもフロー管理の概念を中心とした枠組みであり、以下のようなものがあります。
- 文書フローチャート: 「既存のシステムの構成要素を通じた文書フロー管理を目的とした」もので、「・・・左から右へと読む図であり、さまざまな事業部門にまたがる文書フローを記録する」図。
- データフローチャート: 「システムにおけるデータフロー管理」を示すもので、「・・・管理の流れではなく、主にシステムを通じてデータが伝送されるチャネルを示すために使われる」図。
- システムフローチャート: 「データ入力、プログラム、ストレージメディア、プロセッサ、通信ネットワークなどのシステムの主要な構成要素と交信し、これらを通過するデータフローを示す」図。
- プログラムフローチャート: 「システム内のプログラム内部の管理を示す」図。
ベロニスは、1978年発行の著作「マイクロプロセッサ: 設計と応用 (Microprocessors: Design and Applications)」で、詳細の範囲とレベルに基づき、以下の3種類のフローチャートを論じています。
- システムフローチャート: 使用するデバイスを特定するもの。
- 一般的なフローチャート: 概要を示すもの。
- 詳細なフローチャート: さらに詳細を示すもの。
ボールは、1978年の著作「プログラマーのための手引き (A Guide for Programmers)」で、以下の2種類のみを挙げています。
- システムフローチャート
- プログラムフローチャート
しかし、フライマンは2001年の著作 「品質およびプロセスの改善 (Quality and Process Improvement)」 の中で、コンピューター的な観点よりもビジネス的な観点で、フローチャートを複数に分類しています。
- 意思決定フローチャート
- ロジックフローチャート
- システムフローチャート
- 製品フローチャート
- プロセスフローチャート
また、他の人物によって以下のような図がフローチャートの一種として定義されています。
- スイムレーン図 (別名スイムレーンフローチャート): 複数のチームにまたがるプロセスでの担当範囲を示すもの。
- ワークフローフローチャート: 一般にタスク、文書やオフィス内の情報を含むワークフローを記録するもの。
- イベント駆動型プロセスチェーン (EPC) フローチャート: 業務プロセスの文書化や計画に用いるもの。
- 仕様記述言語 (SDL) フローチャート: システム定義、ブロック、プロセスの3つの基本的な構成要素から構成され、コンピューターのアルゴリズムのブレインストーミングに用いるもの。
また、以下の関連図もフローチャートの一種として捉えられることがあります。
- データフロー図 (DFD): 任意のシステムやプロセスの情報の流れをマップ化するもの
- プロセスフロー図 (PFD)(別名プロセスフローチャート): 工場における主要な構成要素間の関係を図示するもの
- ビジネスプロセスモデリング表記法 (BPMN 2.0): 計画された業務プロセスの手順をモデル化するもの



